林業とは、長い時間を蓄積し、成果を積み上げていくものだとすれば。
経営の実践の中にこそ、本物の智慧、情報があるのではないでしょうか。
経営の実績が無い人より、長年の成果をあげた人の言葉にこそ、耳を傾けるべき真実があるのでしょう。
大橋慶三郎氏は、戦後間もない頃からすでに60年以上にわたる林業経営を実践された方です。
しかも、とぎれさせること無く、経営を継続させて来られた実践者です。
その中で、さまざまな技術的工夫、経営ノウハウが磨かれ、それらは大橋氏の経営の中で、実践され、威力を発揮してきました。
言葉だけでは何とでも言えます。
机上で林業を立派に語ることは、誰でも出来ます。
けれど、60年経営を実践し、成功をおさめた方は、どれだけいるでしょうか。
それだけに、氏の言葉ほど、説得力のある例は、どれだけあるでしょうか。
考えてみれば、大橋氏に代表される、(60年のような)長年の実績をもつ、実践の言葉は、意外にみなさんの耳に届いてはいないんじゃないでしょうか。
林業とは、時代を超えて実践されてこそ、意味があるのでしょう。
50年前につくった作業道がいまも壊れることなく、立派に役に立っている姿。
そこに学ぶべきものがあるのではないでしょうか。
数々の林業経営の失敗例と成功とを分けるものは、何か。
これを知っておかなければ、経営破綻を招きかねない誤解とは何か。
それらを、ぜひ本書から見出して頂ければと思います。
「林業の中に生活があるのではなく、生活の一部に林業がある」
「林業は金借りてまでやるもんやない」
「時を考えなかったら、林業は成立しない」
タナ地形の発見、作業道づくり、適正規模、時間軸、借金林業の怖さ、現場を見る眼をどう養うか、後継者に伝える言葉など。
わが山を知り、自然に逆らわず、調和を尊び、決して無理をしない、見得も張らない。身の程にあわせたやり方を貫き通すことの大事さ、林業実践を語った、真実の本です。(白石)
大橋慶三郎 林業人生を語る