森林療法の実践・普及で精力的に活躍されている上原 巌さんの新刊が、本会から発行されました。
昨年まで2カ年にわたり、私どもが発行しております月刊「現代林業」に連載の内容を更新し、大幅に加筆され、この本になりました。

本書は、森林療法研究のパイオニア上原巌先生が、全国各地でのさまざまな活動を訪ね、現場の人々と協働し、森林療法を発展させていく過程を紹介しています。
地域の健康維持活動、医療活動、サラリーマン等のメンタルヘルス、高齢者の健康増進など、私たちに関心の高い分野での最前線が描かれています。
森林療法活動の手法、ワークショップ活動の実際、開発されたプログラム例など、具体的な実践方法を発展させていく最前線も紹介しています。
これらすべてが、森林整備と健康・医療が連携した地域づくり活動を実践し、具体化するアイデア・手法としてまとめられています。
この本の冒頭、上原先生は、珍しく、ご自身の体験を語っています。例えば、ある大学の教官として単身赴任のころ、不安障害に悩まされたことなど。率直に、体験として読者へ語っています。
さらには、ご自身の癒しの時間についても。
例えば、
「山の樹々と向き合い、その樹々からの「声なきメッセージ」に耳を澄まし、同時に現在の自分の姿や、心のあり様、生活習慣などを振り返ることを行っている。」
「小生の森林での時間は、『さて、このあたりで』と思ったところで、腰を下ろし、心を静かにすることから始める。
はじめは、鳥のさえずりや『あの鳥の名前は何だろう?』などのことに注意が向くが、そのうちに、自分と同じ「生命体」として自分の周囲の樹々を意識できるようになってくる。」
といった経験を書いておられます。
詳細は、ぜひ本書で読んで頂きたいのです。
まずご自身を語る先生の言葉は、姿勢は、読者や先生とともに地域の森林療法活動を創っている地域の人々にとっても、率直で、ある意味フェアな印象を、読者みなさんに与えるのではないでしょうか。
すくなくとも、私自身は、先生の原稿を読み、そのように感じております。(白石)